2016049 誉田哲也 ブルーマーダー

誉田哲也
ブルーマーダー
出版社 光文社
発売日 2012/11/17

p82
「半グレは、ガキの頃からテレビゲームと携帯で育ってきてるから、そういうのの扱いに長けてるんですよ。振り込め詐欺がいい例です。あれは、昔ながらの極道に発明できるシノギじゃありません。奴ら世代の、新しいシノギです」
 出会い系サイトの運営、クレジットカードの偽造、ネットを利用してのカジノやドラッグの販売、メールを介して行う野球賭博。どれもこれも始めたのは暴力団ではなく、半グレ連中だといわれている。

p339
「ヤクザは、刑務所なんて別荘程度にしか思ってねえからな。十年、十五年務めたって、出たら何をやるか、どういう家に押し入ったらいいか、どんなクスリを打つか、どうやって女を犯すか、どうやって他人を騙すか、脅すか……かえってムショで知恵つけて、タチが悪くなって帰ってくる。そんな犯罪者の実態も知らねえで、死刑廃止だなんてホザいてるのはただの阿呆だ」
「服役囚にだって人権はある? 有効なのは終身刑で、彼らから悔い改める機会を奪うべきではない? おいおい、馬鹿いうなって。犯罪者はな、自分の罪を悔い改めたりなんざしねえんだ。挙句に死刑がなくなったら、ムショでも暴れ放題ってことじゃねえか。毎日が暴動でお祭り騒ぎになるよ。刑務官は寄って集って袋叩き、脱獄だってし放題。捕まったってどうってことねえ。どうせ、死刑はねえんだからな」
なるほど。論点はそこだったか。
「……な? 大事なのは死刑なんだよ。こんなことやってたら、最悪の事態が待ってるかもしれない。そういう想像力が一番大切なんだ。そういう想像力でしか、世の中はよくならねえんだ。だから俺が、その想像力を、連中に植えつけてやったわけさ。警察による摘発、捜査、逮捕、裁判やって懲役……そんなのはしょせん対症療法だ。いくらやってもイタチごっこ。悪を根絶なんてできない。根絶させたいなら……殺すのが一番なんだよ」

コメントを残す