20200405『21世紀の啓蒙』上 スティーブン・ピンカー 第二部

『21世紀の啓蒙』上 
スティーブン・ピンカー
【第二部 進歩】p083
***見出し
第四章 はびこる進歩恐怖症
第五章 延びた寿命
第六章 医学の進歩
第七章 人口は増え食糧も改善
第八章 富は増え貧困は減少
第九章 不平等は真の問題にあらず
第十章 環境問題は解決できる
第十一章 世界はさらに平和になった
第十二章 世界はいかに安全になったか
第十三章 テロリズムへの過剰反応
第十四章 民主化はなぜ進歩か
第十五章 偏見・差別の減少と平等の権利

***

第七章 人口は増えても食糧事情は改善

■人口増加でも飢餓率は減少p142
p142
ほとんど知られていないが、急激な人口増加にもかかわらず、発展途上世界はその人口を養うに至っている。
最も顕著な例が中国で、一三億人が、一日一人当たり平均三一〇〇キロカロリー摂取できるまでになっている。アメリカでいえば連邦政府のガイドラインで「大いに活動的な若い男性」の必要量とされるカロリー量である。
またインドの一〇億人も、一日一人当たり平均二四〇〇キロカロリー摂取しており、これは「大いに活動的な若い女性」ないし「活動的な中年男性」の必要量に相当する。アフリカ大陸も二六〇〇キロカロリー、中国とインドのあいだにつけている。
p143
続いて子どもの発育不全。子どもは栄養不足になると、生涯にわたって病気がちで死亡率が高くなる。[図7-2 子どもの発育不全]によれば、ケニア、バングラデシュなど貧しい国では割合が高い(40~80%)が、この二〇年ほどで半減(30~40%)。コロンビアや中国なども少し前まで割合が高かった(40%前後)が、着実に下がっている(10~20%)。
p144
[図7-3 栄養不足人口]に先進国が含まれていないのは1970年以降ずっと五%未満で、統計学的に無視できる。発展途上世界では今でも人口の一三%が栄養不足。しかし四五年前の三五%よりずっといい。この七〇年間で、世界は人口を五〇億人増やしながら、飢餓率も減らした。
p146
飢餓は事実上アフリカ以外の国では克服された。中国、ロシア、インド、バングラデシュは「飢餓の地」というレッテルをはがされ、一九七〇年代以降はエチオピアとスーダンにしか残っていない。
p147
もちろん壊滅的な被害を出さない飢餓はいまだに存在する。先進国の低所得層とか。
二〇一一年、東アフリカ
二〇一二年、サヘル(サハラ以南)
二〇一六年、南スーダン

p150
一トンの穀物の収穫・脱穀
一九世紀中頃、二五人で丸一日。
今日、コインハーベスターで六分間。
(略)
窒素はタンパク質、DNA、葉緑素、そして生体エネルギーキャリアであるATP(アデノシン三リン酸)の主成分である。窒素原子は大気中に豊富にあるが、二原子分子で分離が難しく、そのままでは植物が吸収しにくい。解決したのはフリッツ・ハーバーとカール・ボッシュで、一九〇九年に完成したハーバーの発明を、その後ボッシュが工業化し、メタンと蒸気を使って大気中の窒素を単離してから肥料に合成する。これで肥料の大量生産が可能に。この化学肥料が、逸れまで痩せた土地に窒素を戻すために必要だった大量の鶏糞肥料に取って代わり、農作物の生産量が飛躍的に伸びた。彼らによって二七億人という人名が救われた。
したがって「(一七九八年のマルサスの)算術級数的」云々はもう忘れてよい。この一世紀で、穀物単位面積当たりの収穫量は増加し、価格は下落した。気が遠くなるほどの恵みである。現在の農作物を窒素肥料なしで栽培するとしたら、ロシアと同じくらいの面積をあらたに開拓しなければならない。
p151
続いてもう一人、一九五〇~六〇年代に大勢の命を救ったのが、ノーマン・ボーローグ。発展途上世界で「緑の革命」を成し遂げた。

p153 農業の技術革新(遺伝子組み換え技術)は不当に攻撃されている
※伝統的な環境保護団体の犯罪
遺伝子組み換え技術を使えば、これまで人間が数千年かけてようやく成し遂げたこと、そして「緑の革命」のボーローグが「気が遠くなりそうな退屈な作業」に何年も費やして成し遂げたことを、「何日」という単位で実現できる。
遺伝子組み換え技術の安全性については、何百もの研究、主要な保健・科学機関のすべて、一〇〇人以上のノーベル賞受賞者が保証してきた。それも当然で、そもそも遺伝的に改良が加えられていない作物などない。
p154
しかし伝統的な環境保護団体は、「飢餓への常習的な無関心」を保ちつづけて、遺伝子組み換え作物を人々から遠ざけようと狂信的な反対運動を行ってきた。それも富裕国の自然食愛好家だけではなく、発展途上国の貧しい農家からも遠ざけようとしてきた。
彼らは科学を知らない人々につけ込んで利用する。遺伝子に関する人々の無知については気の滅入る報告がある。一般の人々の半分が次のことを信じている。
「普通のトマトには遺伝子がないが、遺伝子組み換えトマトにはある」
「食物に挿入された遺伝子は、それを食べた人のゲノム(*1)に移動する」
「オレンジにホウレンソウの遺伝子を挿入すると、ホウレンソウ味のオレンジになる」
さらに八〇パーセントの人が、すべての食品に「DNAを含む」という表示を義務づける法律を指示しているという。
作家で環境運動家のスチュアート・ブランドは言う。
「あえて言うが、環境保護運動は遺伝子組み換えに反対することで、これまでに犯してきた他のどんな過ちよりもひどい損害を人々に与えてきた。われわれ環境運動家は人々を飢えさせた。科学の足を引っ張り、しかも環境保護運動にきわめて重要な遺伝子組み換え技術を禁じることで自らの足も引っ張ってきた」
p155
遺伝子組み換え技術に対する環境保護団体の頑なな態度によって、その技術を最も必要としている地域が致命的な打撃を受けているからだ。サハラ以南のアフリカは痩せた土壌、気まぐれな雨、港に適した湾や可航河川の不足に苦しんでいる。この地域が特殊なのは、人工肥料による土壌の回復が実現していないことだ。(*2)
すでに実用化されたものでも、アフリカ用にあらたに開発するものでもいいから、遺伝子組み換え技術を使い、加えて不耕栽培(*3)や細流灌漑(*4)といった現代技術を導入すれば、アフリカは一気に初期の「緑の革命」よりもずっと速く改善に向かい、今なお残る栄養不足問題も解消されるはずである。

(*1)ゲノムとは、遺伝子(gene)と染色体( chromosome)から合成された言葉で、DNAのすべての遺伝情報のこと。
(*2)痩せゆく土壌と弱体化する農作物──食料供給の危機に立ち向かう研究者たち https://wired.jp/2019/10/08/food-crisis-soil-grains/
(*3)耕さない農法。省力化や土壌流出防止などの利点がある。
(*4)配水管を農地にめぐらし根のそばにだけゆっくり水や肥料を送る。水や肥料が節約できる。
※質問 化学肥料を使うと土壌が痩せるのか?
http://agrin.jp/hp/q_and_a/kagaku_taihi.htm

***

第八章 不平等は本当の問題ではない

***

第九章 不平等は真の問題にあらず
■「不平等」は問題視されすぎp187
p188
格差拡大は本当に多くの人々を困らせてきたのか。経済的不平等は一九八〇年に最小を記録したあと拡大に転じた。
経済的不平等の度合いは「ジニ係数」で示される。〇が完全に平等。一が完全に不平等、一人がすべて独占。
スカンジナビア諸国のように格差最小国が〇・二五、
南アフリカのように大きい国が〇・七、
アメリカは〇・五一。
p189
あまりにも多くの人が「格差は改善すべきこと」ととらえているが、間違っている。(※文意)

■所得格差は幸福を左右する基本要素ではないp189
※これはわかる。「吾唯足知」「有無同然」食べていけりゃいい。

■ 「不平等が悪を生む」という考えは間違っているp193
p194
決定的な反論の根拠は、社会学者ジョナサン・ケリーとマリア・エヴァンズが三〇年にわたって六八の社会の二〇万人の調査結果。
不平等と幸福度の相関は疑似相関であって因果関係ではない。
※よおわからんが学者も間違う。疑似相関=2つの事象に因果関係がないのに、見えない要因(潜伏変数)によって因果関係があるかのように推測されること。

■「不平等」と「不公正」を混同するなp195
p196
最近の論文で、人は分配方法が「公正」だと思えるかぎり、分配結果が「均一でない(※不平等)」ほうを好むことを明らかにしている。
※不平等ではなく、不公正な社会が問題ということ。
汚い手(道徳的に間違ったこと)を使って金持ちになるのは許さないが、真面目に頑張って金持ちになるのは、むしろ貧困層の希望になる。アメリカン・ドリーム的な、か。一考に値する。
じゃあ、格差は放っておいてよいということではない。当然、改善の対象にはなる。
しかし、気候変動という重要な問題もある。と、こんな流れになるかな。それは、第一〇章か。

■経済発展に伴う格差の変化p197
p202
格差縮小が貧困減少によって成し遂げられつつある。
※「図9-1 国家間ジニ係数」「図9-2 グローバル・ジニ係数」のグラフあり。これらによれば、世界全体での格差は縮小しつつある。(p202)

■二〇世紀以降の格差縮小の原因は戦争p202
一九世紀、拡大経済が人々を都会の仕事へ引き込み格差拡大。
二〇世紀、二度の世界大戦により格差縮小。戦争は所得の均等化をもたらしがち。戦争は富を生む資本を破壊し、インフレで借金を帳消しにし、富裕層に高い税率をのませ、その分を政府が軍関係に分配し、軍以外の労働需要が増え、その結果が格差縮小。
※新型コロナが飲食業に税を分配(協力金)し、その結果、配送業の需要が増えた。ちょっと似ているな。

p203
これは全体を引きずり下ろして貧しいほうに合わせる均等化で、戦争はそういう悲劇を起こす。
歴史学者ウォルター・シャイデルいわく「経済的平等は、戦争・革命・国家崩壊・疫病などの悲しみとともにもたらされてきた。軽率な願いは悲劇をもたらす」
※カネにとらわれると自分の首を絞めるってことだな。それはわかる。

p204
貧困減少の最善の方法は、市場経済である。「再分配」の目的は富裕層を引き下ろすことではなく、貧困層を引き上げることである。
※やはりピンカーは修正資本主義信者。

後日

■優先課題は経済成長、次はベーシックインカムp222
※そうか、ピンカーは修正資本主義者でベーシックインカム賛成なのか。マイケル・ハートの〈コモンズ〉(※地球共有主義という感じ。社会主義的)とどちらがよいのか?

***

第一〇章 環境問題は解決できる問題だ

■半宗教「グリーニズム」の間違い
p230
エコモダニズム
一、ある程度の環境汚染は避けられないと理解するところから始まる。
p232
二、工業化が人類に利益をもたらしていることをきちんと理解する。工業化によって、数十億人の食糧がまかなわれ、寿命は二倍になり、極度の貧困も減少した。機械が人力に代わったことで、奴隷制度が終わり、女性は解放され、子どもは教育を受けやすくなった(第7,15,17章)。夜に本を読めるのも、好きなところに住めるのも、冬に暖かく過ごせるのも、世界の動向を見ることができるのも、人の交流が増えたのも、工業化のおかげである。環境汚染や動植物の消失による損失は、これらの恩恵と合わせて考えなくてはならない。

■さまざまな面で地球環境は改善されているp241
※これはマジか?温暖化しているのに?

■憂慮すべき気候変動p253
※いやさっき改善されているって?

■世界の「脱炭素化」はこれまでも進んできたp265

■脱炭素化の第一の鍵「カーボンプライシング」p271
■脱炭素化の第二の鍵「原子力発電」
※ピンカーが原子力推進派ならもう完全に合わないな。

第一一章 世界はさらに平和になった
第一二章 世界はいかにして安全になったか
第一三章 テロへの過剰反応
第一四章 民主化はなぜ進歩か
第一五章 偏見・差別の減少と平等の権利

※ちょっと全体に口のうまい詐欺師ではないかという雰囲気が。富裕層擁護か。

#文芸部

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