市場主義のたそがれ

p151
現在、アメリカのサブプライムローン問題がきっかけの世界的な金融危機の最中(略)
バブル崩壊後の日本と同じように、各国が「流動性の罠」にはまるとは予想すらできなかった。
ケインズはあくまで「理論的可能性」として「流動性の罠」に言及しただけだ。
金融危機が実体経済に波及し、「世界同時不況」に陥っている現状である。
※本書は2009.6.25 発行

p33
ケインズ経済学が優れて「貨幣的」理論だったが、フリードマンのレトリックにより、マネタリズムを主張する人々だけが「貨幣」を重視しているという幻想が生まれた。(略)
ケインズの言葉。
「利子率がある水準まで低下した後では、ほとんどの人が低い率の利子しか生まない債券よりも現金を選ぶ。この意味で、「流動性選好(現金が好き)」が事実上「絶対的」となる可能性がある。この場合、貨幣当局は利子率を効果的に支配できない。」
そしてケインズはこう続ける。
「この極限的な場合は、将来実際に重要になるかもしれないが、現在までのところでは私はその例を知らない。」
『一般理論』を書いた時点のケインズにとって、一九九〇年代の平成不況下の日本や、アメリカのサブプライムローン問題に端を発して世界的な規模で広がった金融危機のさなかで多くの国が「流動性の罠」にはまっていくことなどは「想定外」だったことがわかる。
p34
別の言葉で言えば、のちのケインジアンが財政政策を偏重したが、ケインズ自身は、貨幣政策(*1)を有効だと信じていた。
(*1)フリードマンの「X%ルール」のようではなく、経済の状況に応じて貨幣当局が裁量的な貨幣管理によって利子率の上げ下げに努力すること。

※低金利ゆえ貨幣を増やしても効果なし、ということか?
「現金を好む=効果なし」?
有効需要が増大しない=景気がよくならない?」

p34
サムエルソンの新古典派総合は、一九六〇年代最盛期で、七〇年代の前半までは「主流派」。
サムエルソン「マネタリズムは極論であり、特殊ケース」

p42
コラム② 貨幣は重要である
ケインズ『一般理論』による【不況の原因】
流動性選好(現金が好き)が貨幣供給量と比べて強い。※カネが欲しいのに量が少ない。
そのために利子率が高止まりする。
それが予想利潤率(*1)の激減とあいまって、
投資量を少なくさせる。
その結果、不況になる。
(*1)企業家の予想利潤率。移ろいやすい。ケインズは「資本の限界効率」と呼んだ。企業家が将来に対して悲観的になれば必要以上に低く見積もられる。

つまりケインズは、貨幣を軽視したどころか、自分の理論を「生産の貨幣理論」と呼んだことがあるくらいだ。

p43
疑問。マネタリズムは、一見「貨幣重視」に思えるが、結局は「貨幣は重要でない」という理論では? 理由は次の通り。
フリードマンのマネタリズムの理論構成
「貨幣量の変化は、一時的に生産量や雇用量に影響を与えることはある。しかし長期的には、物価を変化させるだけ」
長期的に物価を与えるだけの状況=完全雇用実現状況。
貨幣が実体経済に影響を与えず、物価だけに影響を与えること=「貨幣の中立性」の命題が成立している(貨幣数量説の表現)。
とすれば、マネタリズムの理論や政策は、長期的に「貨幣の中立性」の命題が成立している完全雇用の状況にしか当てはまらない。=貨幣は実体経済になんの影響も与えない。すなわち「貨幣は重要ではない」。
フリードマンはなぜこんな理論を「貨幣は重要である」というキャッチフレーズで「伝道」することができたのか。
理由の一つはケインジアン『一般理論』が今の大学教育では「読まれざる古典」だから。(略)フリードマンのレトリックが成功する。
p44
あまりにもケインズに不公平なので、ポスト・ケインジアンたちは、『一般理論』のアイデアによる経済理論をつくろうとしている。(略)しかし新古典派(マネタリズム)が優位な現在の経済学会では、有能な学生は、ポスト・ケインジアンには近づきにくい。

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