うたげと弧心 大岡信

『うたげと弧心』大岡信
p9
「うたげ」という言葉は、掌を拍上(うちあ)げること、酒宴の際に手をたたくことだと辞書は言う。笑いの共有。心の感合。二人以上の人々が団欒して生みだすものが「うたげ」である。

p12
弧心のない人にはいい作品は作れない。

p13
協調と競争の両面性をもった宴の場での「合わせ」が、古代から現代にいたるまで、われわれの文芸意識を支配してきた。(略)
「合わす」ための場のまっただ中で、いやおうなしに「弧心」に還らざるを得ないことを痛切に自覚し、それを徹して行った人間だけが、瞠目すべき作品をつくった。しかも、不思議なことに、「弧心」だけにとじこもってゆくと、作品はやはり色褪せた。「合わす」意志と「弧心に還る」意志との間に、せんとうてきな緊張、そして牽引力が働いているかぎりにおいて、作品は稀有の輝きを発した。みうしなってはならないのは、その緊張、牽引の最高に高まっている局面。伝統の墨守や個性の強調ではない。両者の相撃つ波がしらの部分は、常に注視と昂奮をよびおこす。

p93
近代の歌集の一大特徴が、何よりもまず、『生きることの意味を問う』生真面目さにある。(略)一千数百年の若の歴史において新現象。橘曙覧(たちばなあけみ)、香川景樹、賀茂真淵、小沢蘆庵、これら江戸時代歌人の中に芽生えていた近代的諸要素をむしろ重視したいが、それでもなお、彼らは歌を明治中期以後の歌人たちのように、『自己確認と自己表現』のためのせっぱつまった手段として用いることはなかった。

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