20171202 星が吸う水 他 村田沙耶香

『殺人出産』
p84
大きな時の中で世界はグラデーションしていて、対極に思えても二つの色彩は繋がってる。だから、今、立っている世界の正常が、一瞬の蜃気楼に感じるんです。

『トリプル』
無理してるなあって感じ。

『タダイマトビラ』
p27
「え、だって、私、別にお母さんのこと好きじゃないし」
何気なくそう答えると、その場がしんとなった。(略)
私は家での常識は外では通用しないことを知った。異端児にならないように気を付けながら、私は話をあわせて笑った。それから、外で家族について話すときは、用心深く言葉を選ぶようになった。(略)
p28
母の裸足の足が、畳の上に転がっていた。
少し黒ずんだ、脂肪と筋肉で膨れた母のふくらはぎ。その先に、私が一〇年前にあけた肉のドアがある。
この世には、狭い暗がりから世界に向けたドアが無数にあって、私はたまたま、母の足の間についているドアを開けただけだ。
※家族システムの解体。作者の精神は強い。諸行無常のゼロを認識した上で生き続けている。

『ハコブネ』
p53
皆と自分が一つだけちがうのは、皆は永遠に続くおままごとの中にいて、自分だけはひとり遊びを終えて、宇宙をただ漂うだけの平坦な時間の流れへと戻っていかなくてはならないことだ。
(略)
おままごとの中でいつのまにか生まれた決まりごと、でもそれを守るから、幻想を共有するのは楽しいのだ。
※守らなければ野生の世界。あるいはホッブズのリバイアサンか。

p158
「確認って、何をですか?」
「ちゃんと、私たちの間にセックスが成立するかどうかです」
「大丈夫ですよ、きっと」
「いえ、した方がいいです。私、ちょっと変わってる、かもしれないし。だから、確認したいんです」
※作者は、人はひとりでしかありえない、と確信している。作者にとってセックスとは、ひとりからふたりになること。つまりは、青春小説。あるいは、成人手前小説。ターゲットにしたのか、本質なのか?
※クッションと里帆がセックスを試みる場面は、抽象記号を弄ぶという感がつよい。アンリアル。出口なし。サルトル。

p166
そこには、クレーターに転がる、二つの星の欠片があるだけだった。

p189
知佳子は思わず暗がりの中の里帆をじっと見つめていた。里帆がクッションに口付けたとき、彼女はきっと、一生、性別をやめることはないだろうとわかった。無性という性別であっても、それは知佳子の「無」とは全くな違うものなのだろう。

p197
外を星の光が照らしていた。その光景を、誰かと共有することはなくても、星が過ごしている永遠の時間の中で暮らしていくことは、悪くないように思えた。

***

星が吸う水
p83
「何でかな。ひょっとしたら、自分のこと、只の星の欠片だって思えば、その上の決まりごとのほうが、朧げなものだってかんじられるからかもね。その感覚と地球の上のいろんな決まりと、どちらが幻想なのか、私にもわからないけれど」
※脳の造りが違う人。ゆえに世界をゼロから見直さざるをえなかった人。虚無で優しい。
最後の立ち○○○のシーンできれいに収めるあたり、流石プロ作家。

***

『ギンイロノウタ』村田沙耶香
表紙の女性は、同作者『マウス』の瀬里奈をイメージさせる。
一、「ひかりのあしおと」。さすが作家さん。
二、「ギンイロノウタ」。冒頭「私が“化け物”だとして、それはある日突然そうなったのか、少しずつ変わっていったというならその変化はいつ、どのように始まったのか……考えれば考えるほど、脳は頭蓋骨から少しずつ体の内へと溶け出していき、その中を漂いながら、ぼやけた視界で必死に宙に手を彷徨わせる。」

***

『マウス』村田沙耶香
瀬里奈と律。いろいろと救われる作品。作者の現役コンビニ体験を彷彿。

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