20170406 愛しのオクトパス サイ・モンゴメリー

p8
今から五億年あまり前に、進化の過程でタコにつながる系統と人間につながる系統とが分かれた。私は思った。その分水嶺の向こう側にある、もうひとつの心に触れることはできるのだろうか、と。

p9
かまれたら唾液と一緒に神経毒も注入され、その毒には肉を溶かす力がある。

p12
実際、私が女だとアテナは知っているかもしれない。タコのメスは人間の女性と同じようにエストロゲンが分泌されるので、彼女が私のエストロゲンを味覚で捉えて認識している可能性はある。タコは全身で味がわかるが、なかでも味覚がずば抜けて発達しているのが吸盤だ。

p18
タコはときおり特定の人間を嫌うことがある。シアトル水族館では、(略)数か月後に訪ねてみると、タコのトルーマンは、(その間は誰にも水を浴びせなかったのに)たちまち彼女をずぶ濡れにした。
※顔を認識する。

p22
タコは体の構造がまったく異なり、心臓は三つ、脳はのどを包み込むように位置していて、体は体毛ではなく粘液に覆われている。血液の色さえも人間とは違って青い。タコの場合は鉄ではなく銅が酸素を運ぶからだ。

p24
タコの腕は、それぞれが同時に違う方向へ、絶えず探り、よじれ、伸び、広がっていた。まるで一本一本が別の生き物で、独自の心を持っているかのようだった。これは文字通り真実に近い。タコの神経細胞(ニューロン)の五分の三は、脳ではなく腕にある。タコの腕がどれか一本切断されたら、切り離された腕はたいてい、その後数時間、何事もなかったかのように動き続ける。

p29
ウィルソンは、三個の透明なアクリル樹脂製の箱にそれぞれ違うタイプの鍵をつけた装置を考案した。(略)箱の中に生きたカニを入れて(略)タコは一度「コツがわかったら」、三分から四分で鍵をすべて開けることができるという。

p65
タコとタコに近い種の擬態能力は、その早さでも多様さでも卓越している。カメレオンも真っ青だ。擬態能力に恵まれた動物でも、決まったパターンがごくひと握りという場合がほとんど。一方、タコなどの頭足類は個体ごとに三十種類から五十種類の違ったパターンを使える。色や模様や質感を〇・七秒で変えることができる。(略)チェッカー盤に頭足類を置いたところ姿がほとんど消えた。格子模様をつくるわけではないが、明暗のパターンをつくりだして、どんな背景だろうと、相手が誰だろうと、ほぼ確実に姿が見えないようにすることができるのだ。

p67
これがとくにうまいのが、インドネシアに生息する種で、砂地に棲むミミックオクトパスだ。あるオンラインの動画では、ミミックオクトパスが姿勢や体色や質感を変えて、最初はカレイに、続いて複数のウミヘビに、最後は毒を持つミノカサゴに変身する。…ものの数秒でだ。
以上すべてが純粋に本能的なものだと示唆する研究者は現在はいない。凧は間違いなく、そのときに生み出すべきディスプレイを選んで、それに応じて変化し、その結果をチェックする。そして必要なら再び変化する。(タコの)オクタヴィアの擬態能力が先輩のタコたちを上回っていたのは、海で野生の捕食者や獲物に囲まれて暮らした期間が長く、「学習して」いたからだ。
このことも、タコ異質な、無脊椎動物の知能を持っているという証拠だ。

p70
タコの脳は、無脊椎動物にしては非常に大きい。オクタヴィアの脳はクルミくらいの大きさ…アフリカ西海岸に生息する大型インコでグレーの体に赤い尾のヨウムの脳と同じくらいの大きさだ。アイリーン・ペパーバーグ博士が訓練したヨウムのアレックスは、英語の話し言葉を百語、意味がわかったうえで使えるようになった。形や大きさや材質という概念を理解していることを示した。計算ができた。質問もした。訓練係たちをわざと欺き、見つかると謝りもしたという。

p71
タコのニューロンの数は三億個。ラットは二億個。タコと同じ軟体動物のモノアラガイ(淡水貝)はせいぜい一万二千個だ。一方、ヒトのニューロンは一千億個。ただし実際にはヒトの脳はタコの脳と比較できない。(略)シカゴ大学の神経科学者クリフ・ラグズデールによれば「脊椎動物以外では頭足類だけが、複雑で聡明な脳の成り立ちを示す唯一の例だ」。

p77
「彼女(タコ)はボール遊びをしていたんだよ!」本来は呼吸と異動のために進化した器官である漏斗を、遊ぶために使ったのだ。この研究結果は比較心理学ジャーナル誌上で発表された。「遊ぶのは知能のある動物だけだ」とローランド(シアトル水族館館長)は力説した。「カラスやオウムのような鳥類、サルやチンパンジーのような霊長類、犬やヒトだ」

p112
タコの心理学者であるジェニファーによれば「タコが賢くなった理由と私たちが賢くなった理由は違う」。タコを知性に向かわせる原動力となった出来事は、祖先から受け継いだ殻を失ったことだったと、ジェニファーは考えている。
※ヒトは樹上生活を失った。
殻がなくなった結果、自由に移動できるようになった。タコは二枚貝と違って、餌のほうからやってくるのを待つ必要はない。ほとんどのタコはカニが一番の好物だが、一匹のタコが餌として狩りの対象にする種は何十もあり、それぞれの種によって、狩りの戦略、用いるスキル、下すべき判断とその修正は違ってくる。擬態して奇襲攻撃をかけるのか。漏斗で水を噴射してすばやく追いかけるのか。水から這い出し、逃げる獲物を捕まえるのか。
※それでタコは賢くなった? つまり生きのびるため。ならばヒトと同じでは?

p133
タコの子供たちは海をさすらうプランクトンの一部になる。プランクトンは食物網の基礎となる無数の小さな動植物の混合で、世界の酸素のほとんどを生み出し、世界を生かしている。

p152
心理学者のスーザン・ブラックモアは書いている。「自己というのは、つかの間の印象であって、何かを体験するたびに生じては再び消えていく…。内なる自己などない」とブラックモアは主張する。彼女に言わせれば、意識そのものがフィクションだ。
ブッダは永続する自己の存在を認めようとしなかった。一生を終えるとき、塩が海に溶けるように、自己は永遠に溶けていくのかもしれない。それをつらいと思う人もいるだろう。でも孤独な自己を手放して永遠の海(※または宇宙)の一部になるのも、神秘主義者が約束するように解放、悟りになり得る。

p157
アナは私に打ち明けた。親友が自殺する前、自分も自殺を図ったのだ、と。(略)アナは言う。「あのころ知ってたらよかったのに。海はまだ五%しか探査されてないんだって…」

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