20150815チェーザレ破壊の創造者(七)


作者:惣領冬美
出版社:講談社
発売日:2009/8/21

クリストーフォロ・ランディーノ教授(ダンテ研究の第一人者):
 グレゴリウス七世の没後よ二百年─
イタリア半島の各都市ではすでに形だけの権威となった教皇派と皇帝派の反目が相変わらず続いていました。
 ダンテはそんな時代のフィレンツェに生まれたのです。(略)
 教皇派の最高機関(プリオーレ)に属していたダンテは対立派の策略によりフィレンツェを追われることとなるのです。
チェーザレ:
 ボニファティウス八世の政権時か…。
ランディーノ教授:
 彼こそがダンテの元凶…。ボニファティウス八世は己の野心のためには手段を選ばぬ人間でした。その非道さにダンテは“神曲”の中で彼を地獄の業火で焼いています。
 ダンテはフィレンツェを追われた後、亡命勢力の領袖の一人として政権奪回を画策しますが、同志の粗暴なやり方についていけず同派を離脱。
 孤独と失意の中、彼は流浪の身となり(一三〇二年)、その折、各都市の権力者達の事の顛末を書き留めていく─
 これが後の“神曲”の草稿となるのです。

卑劣な者
強欲な者
君主とは名ばかりの
愚かな人間達

ダンテは
各地の支配者達のもとを訪れ
謳って聞かせました

その詩は
多くの者に
感銘を与え
称賛され

役人ダンテは
詩人ダンテとして
このイタリアに
名を馳せることとなるのです

しかし
ダンテの心は
彷徨っていました

真の統治者とは
指導者とは何か─

 ダンテはその答えをミラノ(サンタンブロージョ教会)で見出すのです。
 時の皇帝ハインリヒ七世。当時、皇帝はドイツのアーヘン、北イタリアのミラノ─そしてヴァティカンのあるローマ。この三都市で戴冠式を行なうことが必要とされていました。折しもこの時、ドイツ人皇帝ハインリヒ七世はアーヘンに次いで第二の戴冠式を挙げるためミラノに滞在中でした。理想の統治者を探していたダンテにとって、これは千載一遇のチャンスでした。賢帝の誉れ高いハインリヒ七世をその目で確かめんと彼はミラノへと向かったのです。

ハインリヒ七世:
 おお! そなたが詩人ダンテか。そなたの評判は聞き及んでおるぞ!
ダンテ:
 私のような者がお目通りを許して頂き、まことに恭悦至極に存じます…。拝謁を願っておきながら実を申しますと、私は以前教皇派に属していた者。陛下とは敵対する側の…しかもフィレンツェの─
ハインリヒ七世:
 そなたがどのような人間かは余が決める。
 この目と、この耳で─
 余のもとへ訪れたことを嬉しく思う。歓待する。

 曇天の空の下を彷徨い続けたダンテにとってそれは─まさしく差し込んだ一条の光に他ならなかったのです。

Virtu59 玉座に座る者
 まだ三十代半ばであった若い皇帝ハインリヒ七世にとって、年長者で老練なしかもイタリア人であったダンテは実に頼もしい友人となります。身分や立場を超えて確固たる絆を結んだ二人の交流は、ダンテがミラノを去りトスカーナ地方へ居を移してからも脈々と続いていくのです。
 この時期ミラノは皇帝至上派の都市ではありましたが、それでも依然、教皇派の反発は激しく、度々蜂起しては内線へと突入していました。
 皇帝派と教皇派─イタリア半島はミラノ同様各都市で両者の覇権が揺れ動き、その度戦争が勃発。混乱は頂点に達していたのです。

 ハインリヒ四世(カノッサの屈辱)が力の皇帝であるなら、ハインリヒ七世は知の皇帝といえるでしょう。
 彼は皇帝派の最高権威者として講和という形で各都市の混乱を沈静化させようと、その対応に追われていました。
 そんな折、彼のもとへダンテから書簡が届きます。
 しかし、そこに綴られていたのは励ましやいたわりではなく、強い叱責の言葉だったのです。

あなたはミラノで冬から春まで
浮かれ暮らすおつもりか?

それで毒ヒドラの首を
落とし殺せるとお思いか?

唯一の世界の統治者よ

この狂乱を鎮めたとして
膿の根本を取り除かぬ限り
また反乱は起こるのです

その根源となる毒の名は
フィレンツェ

母親の内臓に牙を向ける
毒蛇なのです

ランディーノ:
ダンテが言う、フィレンツェが毒蛇であるという理由をおわかりですかな? チェーザレ様

チェーザレ:
当時のフィレンツェは教皇至上主義であり、しかも教皇はフランスの傀儡にすぎなかった…

ランディーノ:
 当時のフランス王はフィリップ四世はイタリアを腐敗させた教皇─ダンテを失脚させた張本人ともいえるボニファティウス八世を捕らえこれを幽閉。
 教皇庁は一時期フランスのアヴィニョンへと移されました。
 これにより教皇派はフランスを庇護者とし、この間七十年フランス人の教皇のみを輩出し続けました。
 こうしてフィレンツェはフランスの子飼いと成り下がっていったのです。
 ダンテの言葉はさらに続きます。

トスカーナへいらしてください
浮かれた騒ぎは終わりにしましょう
新たなるイエスの力の湧き出る泉で
あらせられる方よ!

ピサ

陛下万歳!
これで百人力だ!
フィレンツェの奴らを
叩きのめすぞ──!

ダンテ:
陛下!
よくピサへおいでくださいました。
ここ大司教邸で今か今かと待ちわびておりました。(略)
真の目的地はここ(ピサ)ではございません。
陛下が向かう地はローマ。

ハインリヒ七世:
では余にローマでの戴冠式を行えというのか? ダンテ。

ダンテ:
はい…陛下、この大陸を鎮めるためには、より強い、誰もが認める

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