20141025愛を科学で測った男 デボラ・ブラム

愛を科学で測った男
異端の心理学者ハリー・ハーロウとサル実験の真実
2014.7.15 第1刷

はじめに
 本書が二〇〇二年に最初に出版された直後、私は書店のトークショーで、この本の主人公、チェーンスモーカーで、詩人で、アルコール中毒で、一筋縄ではいかない天才心理学者のハリー・ハーロウについて語った。もちろん、トークショーではもっぱら、彼が二〇世紀半ばに成し遂げた大改革の話をした。愛はまっとうな感情であり、非常に重要で、人間の発達を方向づけるものだと心理学者仲間を説得するために彼が孤軍奮闘した話だ。
 説得力はあるが物議を醸した、赤ちゃんザルを使った彼の研究に、私はずっと強い興味を感じていた。母親が子ザルを拒絶するのを観察した研究である。研究者の予測では、子ザルは神経質になり、元気をなくし、いくぶん引きこもりがちになるだろうと思われていた。しかし実際にその目にしたのは、子ザルたちが突然、死にものぐるいになって働きかける様子だった。彼らは母親に愛してもらおうと必死になって、甘え声を出し、すり寄り、撫でさすり、呼びかけた。
 彼らは生まれて最初の基本的な関係をただ修復しようとしただけではない。次に進むためには、修復しなければ「ならなかった」のである。
p4
 トークショーが終わってから、ひとりの女性が話しかけてきた。彼女はウィスコンシン州マディソン郡の病院の看護師で、その病院では親に虐待されてきた成人を診ていた。「まるで、うちの患者さんたちのことを話しているみたいでした」と彼女は言った。「みんなそんな感じなのです」。彼女の患者は三〇代、四〇代、五〇代の大人なのに、いまだに両親に愛してもらいたいという子ども時代の欲求にとらわれたままなのだ。
 彼女の顔に浮かんだ優しさと悲しみをいまだに忘れることができない。彼女は、「サルが教えてくれたことがあるとすれば、生き方を学ぶ前に愛し方を学ばねばならないということだ」というハーロウのメッセージを完全に理解していた。
 サルを使った彼の研究には、動物実験の可否という倫理的な問題がつきまとう。しかし、彼が愛と現実の人生の間に見出したつながりは、五〇年以上も前に彼が説明したときと同様、今でもとても強力だ。

p18
 私たちの人生は愛とともに始まる、とカメラをまっすぐに見てハリーは言う。私たちは人とのつながりを家庭で学ぶ。それは人生を築き上げていくための土台であるし、そうあるべきなのだ。サルであろうが人間であろうが、もし幼少期に愛を学ばなければ、「おそらく、一生愛を学ぶことはない」。

p19
1 ハリー・ハーロウの誕生

あの感動を禁じえない、だが実のところ非常に子供じみた親の愛情というものは、彼らのナルシシズムが生まれ変わったものにほかならず、対象愛へ姿を変えながらも、かつての本質をまごうことなくあらわにするのである。
ジークムント・フロイト(一九一四年)

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